308 ベルギーの小さな街のアートプロジェクト Reading Between the Lines①


ベルギーに行くのは初めてだった。
訪れる一週間前、首都ブリュッセルで同時テロが起きていた。
目的地は郊外の街だったが、当然ブリュッセルを起点に廻る予定だったので、パリからのタリスでブリュッセル南駅に着いたときはおっかなびっくりだった。

ブリュッセルの街はまだその傷跡が癒えていない状況で、地下鉄の駅は閉鎖され、街中に銃を装備した兵士が配備されていた。
なるべく人の集まる場所にとどまらないよう速やかに移動しようと思っていたが、地理の分かりづらさ、各所の閉鎖で、右往左往する羽目になった。
市内の移動は市電を使ったが、そこにも多くのイスラム系の市民が乗ってきて、その度にびくびくしていた。
テロで意識過敏になっていたのだろうが、ブリュッセルはパリ以上にイスラム系住民の割合が異様に高かった。



警戒からあまり楽しめなかったが、ヴィクトル・オルタ自邸やグラン=プラスなど一通り見た。
首都とはいえ比較的小規模でのどかな時間が流れていた。
なぜこの街が狙われたのかよく分からなかったが、なかなか地理感覚は掴みづらい街だった。


 
翌朝、列車で一つ目の目的地の郊外の村に向かった。
列車に乗り込んでからブリュッセル北駅のプラットフォームを見ると、ひたすら同じホームが奥まで10ほど並び、人気が無い。
どこか不気味に感じられた。


つづく