315 ユトレヒト/グラフィック(1)
オランダの古都, ユトレヒト.
観光地化されすぎず, 素朴な風情, おそらく本来の「オランダらしさ」が残っている街.
ヨーロッパにあって非常に個性的な街で, この街を訪れたことは今回の旅の収穫であった.
Schroderhuis
古い街並みの外れにあるシュレーダー邸.
外れと言っても, 中央美術館から徒歩でも行ける距離であった.
見学には事前にネットで要予約.
色のついた線と面で構成される, 立体抽象絵画のような住宅.
赤・黄・青が目立つが、何階調かのグレートーンも重要な要素.
ユトレヒトといえばミッフィーの作者ディック・ブルーナの故郷としても有名だが,
デステイルとミッフィー, この接点は意外だったが, 知ってからミッフィーを見ると改めてこれは斬新なグラフィックデザインだったのだと気付かされる.
正円・正三角形・正方形の単純な幾何学と鮮やかな原色の色使いによる, 極限までシンプルだが伝わる強いグラフィック.
ミッフィーにあまり興味が無く, 旅程に入れていなかったことを少し後悔した.
邸内部は写真撮影不可かつガイドツアーに従って進むため, あまり自分のペースでは見れず, 写真も無し. ガイドツアー自体の質は高かったが, 建築をとことん見て触れたい自分には若干消化不良.
2階リビングスペースの可動の室礼, リートフェルトデザインによる照明や家具も見ることができた.
建築家が家具・照明までデザインするのは稀なことではない.
だがリートフェルトの場合は, 建築や空間に合わせて家具・照明のデザインをしているというより, 一つの明確な考え方がまずあり, 建築も家具も照明もその延長上としてデザインされているという感覚がより強い. というよりそれが現れやすいデザインなのだろう.
例えば下の写真1F奥にかすかに見える, 3本の電燈菅(=線)をxyz方向それぞれに吊ったデザインの照明器具等, 家具から建築まで一貫している.
ユトレヒトの街並にあって異質な存在.
けれど自分の記憶の中では, なぜかこの街の空気感と, その中でシュレーダー邸を見たという経験が, 同質に, 切り分けられることなく残っている.
シュレーダー邸というよりはユトレヒトという街が, そういう不思議な感覚を覚える街だった.
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