406 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(1)
ヨーロッパで田舎町といえば, のどかで平和, 時間の流れがゆっくりで昔ながらの生活が根付いている印象がある.
当然ながら都市部で起こるような犯罪とも無縁で, 夜一人歩きをしたところでまず被害にあうことはない.
多分コミュニティがまだしっかり根付いているからだろう.
けれど,アメリカの田舎町となると,それとは少し異なる.
ヨーロッパと同様に歴史ある田舎町や, 富裕層が住居を構える田舎町は別だが,
スプロール化が進み管理が行き届かなくなったタイプの田舎町が多いようだ.
むしろ都市部より危険なこともあり得る.
勝手ながら, 行く前のカンザスシティには後者のような印象を抱いた.
そもそも情報がほとんどない.
wikipediaによるとギャングが横行していた町との情報.
車社会が非常に強く, 町自体が車での移動を基準に作られている.
車を借りようにも, 町の中心部にレンタカー屋が無い.
ただただ, スティーブン・ホールによるネルソン・アトキンズ美術館を見たいがためにこの町を訪れることにしたが, 不安だけが募った.
その心配は杞憂に終わった.
町を歩く時間がほとんどなかったからだ.
ネルソン・アトキンズ美術館の空間性, それだけでなくその収蔵物の豊富さや, そこにある公共の空気にできるだけ長く浸っていたいと感じて, 終日この美術館に費やすことになった.
ネルソン・アトキンズ美術館があるのはカンザスシティの町の外れ.
大きな公園エリアになっていて, 近くにはケンパー現代美術館もある.
ちょうど町の縁を流れる川に向かって下がっていく地形の斜面部分が公園となり,
その頂上部分に美術館の旧館が威厳を持ってそびえる.
巨大な彫刻作品「Shuttlecock」とともに.
スティーブン・ホールによる増築は, この旧館の脇に斜面に沿って,
プロフィリットガラスの小さめのボックスが並んでいるようにつくられている.
つづく