003 早稲田からY-GSAへ③

早稲田で4年、Y-GSAで半年学んだが、教え方や考え方は対局と言ってもいいくらい対称的だ。

一番それが表れているのが、プレゼンテーションに対する重点の置き方である。

早稲田では、人数が多いこともあり、同じ課題の作品を200人くらいが一斉に提出し、その中から20人ほど優秀作品/先生の目に留まった作品が選ばれて講評される。これは私立の建築学科にほぼ共通することだろう。
つまりそこで重要なのは、案として説得力があるか/案として良く考えられているかよりも、先生の目に留まるか/紙面としての迫力をいかに良くするかだった。
そこにはあまり説明も求められない。「伝わる」かは、ビジュアルや密度としての迫力と先生の好みによる。

一方Y-GSAでは、自分の案に対する明確な説明が求められる。案としての説得力/良く考えられているかが重視され、紙面の迫力はそこまで重視されていない感がある。つまり「伝わる」かは、自分の案を他者に説明する能力で決まる。

どちらも重要な視点だ。
早稲田のようなビジュアル/密度重視は、つまるところ案が良く詰められていれば必然的に紙面に迫力が出るということだと思う。実際に自分もその中にいたので、確かにその通りだと感じる。
Y-GSAの他者に説明する能力については、まさに実社会で建築を仕事としてやっていくときの練習のようなものだ。

早稲田からY-GSAにきて、今一番苦労しているのはまさにその点だ。早稲田にいた頃は、ビジュアルさえ面白く密度を濃くすれば、説明は何となく共通言語のようなものでなんとかなった気がする。が、Y-GSAではその共通言語は通用しないし、ビジュアルが面白くなったと思っていても、明確な説明ができなければその効果が半減してしまう。

だから自分の場合、Y-GSAでの練習を通して、他者に説明する能力を身につけつつ、それでもなお早稲田的なプレゼンの密度感も忘れずにいたい。
とにかく、苦労は多いものの、新たな環境から今までの環境を客観的に観れるようになったことは良かったと思う。