417 二つのガラスの家_Mies and P.Johnson(1)

同時代の2つのガラスの家がアメリカにある. ミースのファーンズワース邸とフィリップ・ジョンソンのグラスハウス. いずれも名作住宅として数えられるが, そのつくりは一見よく似ている. それもそのはず, フィリップ・ジョンソンはミースのファーンズワース邸…

416 実像と虚像のブルックリン_Brooklyn

ブルックリン. このエリアが注目を集めるようになったのは2017年頃のことだっただろうか. アンティーク+シンプルモダン, そしてクラフト感. 家賃の安さに惹かれて移住してきたクリエイターたちによって, 寂れて治安の悪かった旧工業地域は, クリエイティブな…

223 Structure-atmosphere-ecosystem(4)

7.残存するもの/関係性を変えるもの_Structure 自然の生態系を読むように社会のエコシステムを読み解き, そのエコシステムに接ぎ木するように空気感と構造をつくること. 先に書いてしまうと, これが多分自分が目指している建築なのだと思う. 構造とは,まず第…

222 Structure-atmosphere-ecosystem(3)

街のあり方として、ローカルなエコシステムを形成することの重要性を前回述べた. そして建築である. 脱線するといけないので, どういう内容に向かうか先に書いておく. この一年, 様々な場を歩き体験した中で自分が感銘を受けた, この時代に適応したイノベー…

221 Structure-atmosphere-ecosystem(2)

3.生産-消費 二極構造の脱却_Ecosystem 前回記事でも触れたが, Ecosystem=生態系 が今後のまちづくり・建築・ライフスタイルの鍵になると考えている. y-sag.hatenablog.com 建築・まちづくりの文脈での「生態系」という言葉は, これまでも表れてきた. 例えば…

220 Structure-atmosphere-ecosystem(1)

今, 新しい建築のあり方が模索されている. それも狭い建築家界隈内の話ではなく, 今後の社会やシステムやまちづくり等を全て統合した話として. 1. 前時代_Function-service-cosmetic(パッケージ化) 今まさに崩れ去ろうとしている前時代を振り返ってみる. 日…

219 創作の場としての廃墟

11-1 Studioの整備. 近隣には建築・木工系の町工場が多い. 彼らに分離発注して「技術のショールーム」的な場にするとともに, 自分自身でDIYもしながら仕上げていく. そういう整備コンセプト. その一環として, DIY用に, ある作業場を確保することができた. 11…

415 建築化された「散歩」_EPFL Learning Center

スイス, ローザンヌにあるEPFLラーニングセンターを訪れたのは2012年のこと. 完成して間もない頃だった. いうまでもなく空間体験は圧倒的に印象に残ったのだが, 当時はまだとても月並みな表現になってしまいそうで文章化ができなかった. 後年に完成したGrace…

218 Tokyo 2.0(ver. y-sag)

Tyler Cowenという経済学者が4/3にブログに書いた記事が話題になっている. World 2.0 - "There are decades where nothing happens, and weeks where decades happen" - Marginal REVOLUTION コロナ収束後の世界がどうパラダイムシフトするかを予測している…

414 建築化された「散歩」_Grace Farms(2)

丘の起伏に沿って蛇行する「散歩道」. 途中途中にガラスで仕切られた屋内空間が出現する. それぞれがサロンだったり, レストランだったり, 図書室だったりする. いずれも徹底されているのが, 「室」にならないようにしていること. あくまでもサロンもレスト…

413 建築化された「散歩」_Grace Farms(1)

鉄道駅から歩くこと約1時間半. 随分と長い道のりだった. ここはニューヨーク郊外のNew Cannan. アメリカでも特に富裕層の多い街. 途中の道のりには, 森林の中に別荘のような邸宅が並ぶ. やっと辿り着いた, Gracefarmsの正門. これだけだと, まるでゴルフ場の…

412 フォートワースという街

イリノイ州のシカゴからテキサス州のフォートワースに入った途端, 同じアメリカなのに全く違うものに感じられた. 空気感, 物価, 治安, 食事. 空港から列車でフォートワース駅に降り立つと, 目に入ってきたのは, 西部劇のように腰に銃を差した警官たち. 物々…

218 「ハマスホイとデンマーク絵画」展

美術館で初見した自分が知らない画家の絵画. それがずっと脳裏に残り続けるのは珍しいことだ. ちょうど昨年の2月頃のこと. 上野の国立西洋美術館の常設展でこの画家の作品を初めて目にした. たしか企画展の「ル・コルビュジェ_ピュリスムの時代」を見た後だ…

411 シカゴという街

一般的に, アメリカの街並みには風土や歴史があまり無い. それは真だろうか. シカゴは典型的なアメリカの街並みだが, 歴史を帯びつつある街で印象に残った. シカゴはある意味, 最古の摩天楼街が原型をとどめている街だ. 1871年シカゴ大火を契機とした再開発…

410 廃墟もしくは神殿とレトリック_Kimbell Art Museum

建築家でルイス・カーンが好きという人は結構多い気がする. 近代建築の4大巨匠と言われる, コルビュジェ, ミース, ライトそしてカーン. 先般書いたレンゾ・ピアノと同様に, カーンの建築もまた, 自分にとって実はよく分からない存在だった. テキサス州フォー…

409 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(4)

スティーブン・ホール棟には現代アートのコレクションが収蔵. エントランス空間から進み, 先に行くにしたがって下へ下へと降りていく. 斜面上の敷地に対して, 建物は丘にてっぺんの光のボックスだけが出るようになる. 外光をプロフィリットガラスで柔らかく…

408 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(3)

剥かれたリンゴの皮のように螺旋状に浮かぶスロープにより, 柔らかい光の空間が全体に行き渡り, そこで行われる様々な活動を一様に包み込む. ここの素晴らしさは, そこにヒエラルキーが全く生じてないところ. 通常ならエントランスにセキュリティゲートやチ…

407 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(2)

丘に点在する半透明のボリューム. 頂上の一番大きなボリュームが, いわゆるエントランスビルディング. 新古典主義の威厳ある旧館の正面性の強いファサードの横から, 不思議な形態がニュッと顔を出している. 形態の念入りに操作された量塊感. 旧館側面との間…

406 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(1)

ヨーロッパで田舎町といえば, のどかで平和, 時間の流れがゆっくりで昔ながらの生活が根付いている印象がある. 当然ながら都市部で起こるような犯罪とも無縁で, 夜一人歩きをしたところでまず被害にあうことはない. 多分コミュニティがまだしっかり根付いて…

405 レンゾ・ピアノの建築_Extension of Chicago Museum/Extension of Morgan Library

今回のアメリカでは, ・シカゴ美術館新館 ・キンベル美術館新館 ・ナッシャー彫刻センター ・モーガン図書館新館 ・ホイットニー美術館 と, 各都市で一つはレンゾ・ピアノの建築を訪れることができた. というよりどの街にも必ず一つはレンゾの作品があった. …

404 基壇と光の空間_IIT Crown Hall

イリノイ工科大学に着いた時は夕方で, クラウンホールの前にたどり着いた時にはもうすっかり暗くなっていた. 夕景がどんな感じかに興味があった. 一時期, 建築の夕景はまやかしだと思っていた時期があった. もちろん美しいけれど, 人に使われている建築の本…

217 ひらかれたものづくりの場(1)

2019年海の日,「長崎村の海開き」. 長崎といっても九州ではなく, 豊島区東長崎. 当然海などない. イベントの謳い文句が, 「地域にご縁のある音楽家と絵描きなどが集まって, 海がないのに海びらきします.」 もうこれだけでだいぶそそられる. 会場は, 絵具メー…

403 ミースの余白_Federal Center Chicago(2)

この広場にある独特の緊張感といやすさ. どこか, RCR作品の空間に感じるものと非常に似ている. おそらくこの緊張感を生み出していると思われるのが, 座標系とプロポーション. 広場を舗装する花崗岩板, 石のベンチ, 緑地帯, 建物の列柱, サッシ割, 徹底して同…

402 ミースの余白_Federal Center Chicago(1)

黒塗りの鉄骨フレームとマリオン, ガラス, トラバーチンの壁. シカゴのIBMビルやレイクショアドライブアパートメント、ニューヨークのシーグラムビルなど、多くのミース建築を今回滞在中に見た. デザインコードが共通のため, おそらく部分だけを見せられたら…

401 to 1960s TWA

近代という歴史をうまい具合に帯び, それを活用している. 帰国直後に立ち寄った旧TWA Terminal(現TWA Hotel)はまさにその好例. 喧騒のJFK Airport Terminal 5. 連絡エレベーターの文字盤には'1960s'と'Present Day(現在)'の2つのボタン. '1960s'に着くと, …

400 AMERICA_2019

2019年初夏, アメリカ. 高校の頃CA, AZに行って以来だが, 中部・東部は初上陸. ヨーロッパと並ぶ, 現代建築大国. Chicago→Kansas City→Dallas→Fortworth→Pittsburgh→New York と巡った. ヨーロッパと比べて, 街並に魅力のない国(=歴史的な街並がないから) …

216 Fer-ho nomes es

Fer-ho nomes es un gran chance i tambe un gran risc. Una comunicacio amb bones persones, em dona un estimul bo. Pero una comunicacio amb no tan bones persones teu perdes no solament el teu temps sino perdes el teu estimul tambe. Es una per…

215 ローカルビジネスと建築(番外1)

JR中央ラインモール開業は2014年末頃のことのようだ. 当時の自分の中では, 公共建築(≒地域拠点の施設)の対極にあるのが商業建築であり, ここは商業建築として認識されていた. そもそも当時, 地域拠点施設という概念自体あまり無かったように記憶している. JR…

214 大分芸文短大キャンパス整備_Oita PJC Project

大分県立芸術文化短期大学キャンパス整備(2019) 音楽ホール棟+図書館+芸術デザイン棟+シンボルロード デネフェス・オンデザイン設計JVで2015年末から設計監理を行ってきた大分芸文短大キャンパス整備第一期が, 3月の音楽ホール棟・シンボルロード整備の完成…

213 Vylder Vinck Taillieu @YGSA

Architecten de Vylder Vinck Taillieu @Y-GSA 2019/04/20 a+u 561で特集されたベルギーの建築家ユニット. それまで全く知らなかったのだが, そのドローイングに衝撃を受け, その年のa+uでもっとも印象に残った号だった. その彼らのレクチャーが母校YGSAで開…