旅行紀行

417 二つのガラスの家_Mies and P.Johnson(1)

同時代の2つのガラスの家がアメリカにある. ミースのファーンズワース邸とフィリップ・ジョンソンのグラスハウス. いずれも名作住宅として数えられるが, そのつくりは一見よく似ている. それもそのはず, フィリップ・ジョンソンはミースのファーンズワース邸…

416 実像と虚像のブルックリン_Brooklyn

ブルックリン. このエリアが注目を集めるようになったのは2017年頃のことだっただろうか. アンティーク+シンプルモダン, そしてクラフト感. 家賃の安さに惹かれて移住してきたクリエイターたちによって, 寂れて治安の悪かった旧工業地域は, クリエイティブな…

415 建築化された「散歩」_EPFL Learning Center

スイス, ローザンヌにあるEPFLラーニングセンターを訪れたのは2012年のこと. 完成して間もない頃だった. いうまでもなく空間体験は圧倒的に印象に残ったのだが, 当時はまだとても月並みな表現になってしまいそうで文章化ができなかった. 後年に完成したGrace…

414 建築化された「散歩」_Grace Farms(2)

丘の起伏に沿って蛇行する「散歩道」. 途中途中にガラスで仕切られた屋内空間が出現する. それぞれがサロンだったり, レストランだったり, 図書室だったりする. いずれも徹底されているのが, 「室」にならないようにしていること. あくまでもサロンもレスト…

413 建築化された「散歩」_Grace Farms(1)

鉄道駅から歩くこと約1時間半. 随分と長い道のりだった. ここはニューヨーク郊外のNew Cannan. アメリカでも特に富裕層の多い街. 途中の道のりには, 森林の中に別荘のような邸宅が並ぶ. やっと辿り着いた, Gracefarmsの正門. これだけだと, まるでゴルフ場の…

412 フォートワースという街

イリノイ州のシカゴからテキサス州のフォートワースに入った途端, 同じアメリカなのに全く違うものに感じられた. 空気感, 物価, 治安, 食事. 空港から列車でフォートワース駅に降り立つと, 目に入ってきたのは, 西部劇のように腰に銃を差した警官たち. 物々…

411 シカゴという街

一般的に, アメリカの街並みには風土や歴史があまり無い. それは真だろうか. シカゴは典型的なアメリカの街並みだが, 歴史を帯びつつある街で印象に残った. シカゴはある意味, 最古の摩天楼街が原型をとどめている街だ. 1871年シカゴ大火を契機とした再開発…

410 廃墟もしくは神殿とレトリック_Kimbell Art Museum

建築家でルイス・カーンが好きという人は結構多い気がする. 近代建築の4大巨匠と言われる, コルビュジェ, ミース, ライトそしてカーン. 先般書いたレンゾ・ピアノと同様に, カーンの建築もまた, 自分にとって実はよく分からない存在だった. テキサス州フォー…

409 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(4)

スティーブン・ホール棟には現代アートのコレクションが収蔵. エントランス空間から進み, 先に行くにしたがって下へ下へと降りていく. 斜面上の敷地に対して, 建物は丘にてっぺんの光のボックスだけが出るようになる. 外光をプロフィリットガラスで柔らかく…

408 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(3)

剥かれたリンゴの皮のように螺旋状に浮かぶスロープにより, 柔らかい光の空間が全体に行き渡り, そこで行われる様々な活動を一様に包み込む. ここの素晴らしさは, そこにヒエラルキーが全く生じてないところ. 通常ならエントランスにセキュリティゲートやチ…

407 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(2)

丘に点在する半透明のボリューム. 頂上の一番大きなボリュームが, いわゆるエントランスビルディング. 新古典主義の威厳ある旧館の正面性の強いファサードの横から, 不思議な形態がニュッと顔を出している. 形態の念入りに操作された量塊感. 旧館側面との間…

406 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(1)

ヨーロッパで田舎町といえば, のどかで平和, 時間の流れがゆっくりで昔ながらの生活が根付いている印象がある. 当然ながら都市部で起こるような犯罪とも無縁で, 夜一人歩きをしたところでまず被害にあうことはない. 多分コミュニティがまだしっかり根付いて…

405 レンゾ・ピアノの建築_Extension of Chicago Museum/Extension of Morgan Library

今回のアメリカでは, ・シカゴ美術館新館 ・キンベル美術館新館 ・ナッシャー彫刻センター ・モーガン図書館新館 ・ホイットニー美術館 と, 各都市で一つはレンゾ・ピアノの建築を訪れることができた. というよりどの街にも必ず一つはレンゾの作品があった. …

404 基壇と光の空間_IIT Crown Hall

イリノイ工科大学に着いた時は夕方で, クラウンホールの前にたどり着いた時にはもうすっかり暗くなっていた. 夕景がどんな感じかに興味があった. 一時期, 建築の夕景はまやかしだと思っていた時期があった. もちろん美しいけれど, 人に使われている建築の本…

403 ミースの余白_Federal Center Chicago(2)

この広場にある独特の緊張感といやすさ. どこか, RCR作品の空間に感じるものと非常に似ている. おそらくこの緊張感を生み出していると思われるのが, 座標系とプロポーション. 広場を舗装する花崗岩板, 石のベンチ, 緑地帯, 建物の列柱, サッシ割, 徹底して同…

402 ミースの余白_Federal Center Chicago(1)

黒塗りの鉄骨フレームとマリオン, ガラス, トラバーチンの壁. シカゴのIBMビルやレイクショアドライブアパートメント、ニューヨークのシーグラムビルなど、多くのミース建築を今回滞在中に見た. デザインコードが共通のため, おそらく部分だけを見せられたら…

401 to 1960s TWA

近代という歴史をうまい具合に帯び, それを活用している. 帰国直後に立ち寄った旧TWA Terminal(現TWA Hotel)はまさにその好例. 喧騒のJFK Airport Terminal 5. 連絡エレベーターの文字盤には'1960s'と'Present Day(現在)'の2つのボタン. '1960s'に着くと, …

400 AMERICA_2019

2019年初夏, アメリカ. 高校の頃CA, AZに行って以来だが, 中部・東部は初上陸. ヨーロッパと並ぶ, 現代建築大国. Chicago→Kansas City→Dallas→Fortworth→Pittsburgh→New York と巡った. ヨーロッパと比べて, 街並に魅力のない国(=歴史的な街並がないから) …

324 Crematorio/空気感とランドスケープ(3)

葬祭場の内部へ. クレバス状の細長い回廊. 窓は無く, 淡黄色気味のコンクリート壁を, トップライトからの光が洗う. 矩形の礼拝堂. 無数に降り注ぐスリット状の光. 天空からの光が分厚い地を突き破ってそこに到達する様子はBell-llocの表現とも似ている. 方形…

323 Crematorio/空気感とランドスケープ(2)

水平性を強調する水盤, 無機質に建つ本体のコンクリートボックス. 回廊は, この湿地の風景をただ眺めるだけでなく, その空気感の中に身を浸し, 気を整えるための境界. <中間領域>と言ってしまえばそうなのだが, 何かそれだけではニュアンスが抜け落ちてしま…

322 Crematorio/空気感とランドスケープ(1)

ベルギーに戻り, Aarschotという駅からバスで15分ほど, RCRのCrematorioを訪れた. 実はこの作品, 完成は訪問時のつい直前であったが, プロジェクト自体はかなり以前のもの. 2000年代前半のEl croquis には既にほぼ同じイメージでプロジェクトとして掲載され…

321 Educatorium/Material(3)

美しい階段があった. プロフィリットガラスによる光の壁と, 亜鉛メッキグレーチングによる透けた壁. いずれも工業製品だが, それらを上手く組み合わせて使い, 上質な空間に. 断面も納まりも隠しようがないのでそのまま表しになっている. 先ほどの透けた壁に…

320 Educatorium/Material(2)

内部空間の率直な印象. ダイナミックな外観とは裏腹に, 非常に素直で質実剛健な建築だと感じた. 細部に至るまで, 堅実で必然性のある材の構成. シュレーダー邸を見た後だったから余計そう感じたのかもしれないが, 材の構成としてそのまま建築を見せるという…

319 Educatorium/Material(1)

Educatorium / OMA @University Utrecht ユトレヒト大学新キャンパスへは駅前から出るバスで. 高速道路JCTを越え, 少し街からは離れる. キャンパス内のバス停に着くと, 個性豊かな建物たちのお出迎え. Wiel Aretsによる新図書館は良かったが, いくつかは奇抜…

318 ユトレヒト/グラフィック(4)

街をいろどる, 遊び心のあるグラフィック. ユトレヒト駅の中からそれは始まっていた. 再開発中で非常に雑然とした駅周辺. 初めてこの街に列車で降り立った時に感じたガッカリ感はその後の街歩きで解凍されていったが, 駅周辺だけはいただけない街並みだった.…

317 ユトレヒト/グラフィック(3)

鉄格子も鎧戸も無い, ユトレヒトの大きな窓. ヨーロッパの多くの国々がカトリック-ラテン系であるのに対し, オランダは清教徒が多く, 疚しい生活をしていないことを表明するため, このような窓であるとのガイドブックの記載. 確かにどこの窓も, よく磨かれた…

316 ユトレヒト/グラフィック(2)

Utrecht, Netherland Ripoll, Spain この2枚の写真. 下は, 以前自分が過ごしたスペインの街並み. 路地の両脇に崖のように家々がそびえ立ち, 時折歴史的な壁面が顔を出す. グラウンドレベルは必ず店もしくは共同玄関と駐車場, 住居は2階以上にあるのが一般的.…

315 ユトレヒト/グラフィック(1)

オランダの古都, ユトレヒト. 観光地化されすぎず, 素朴な風情, おそらく本来の「オランダらしさ」が残っている街. ヨーロッパにあって非常に個性的な街で, この街を訪れたことは今回の旅の収穫であった. Schroderhuis 古い街並みの外れにあるシュレーダー邸…

314 Kroller Muller Museum 散策型美術館 (4)

Van Eyck Pavilion 記号的な抽象絵画のような印象的な平面図. 学生時代にどこかの本で見て印象に残っていたが, 実在する建築とは思わなかった. 本館とは離れた, 彫刻作品が点在する森の散策路を抜けたところにそれはあった. ファン・アイクとヘルツベルハー,…

313 Kroller Muller Museum 散策型美術館 (3)

Rietveld Pavilion 美術館自体は作品含めて見応えのあるものだった. しかし, Kroller Muller Museumで見るべきところはそこだけでは終わらなかった. シュレーダー邸を設計したトーマス・リートフェルトのパヴィリオン, そして子供の家を設計したアルド・ファ…