2019-01-01から1年間の記事一覧

410 廃墟もしくは神殿とレトリック_Kimbell Art Museum

建築家でルイス・カーンが好きという人は結構多い気がする. 近代建築の4大巨匠と言われる, コルビュジェ, ミース, ライトそしてカーン. 先般書いたレンゾ・ピアノと同様に, カーンの建築もまた, 自分にとって実はよく分からない存在だった. テキサス州フォー…

409 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(4)

スティーブン・ホール棟には現代アートのコレクションが収蔵. エントランス空間から進み, 先に行くにしたがって下へ下へと降りていく. 斜面上の敷地に対して, 建物は丘にてっぺんの光のボックスだけが出るようになる. 外光をプロフィリットガラスで柔らかく…

408 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(3)

剥かれたリンゴの皮のように螺旋状に浮かぶスロープにより, 柔らかい光の空間が全体に行き渡り, そこで行われる様々な活動を一様に包み込む. ここの素晴らしさは, そこにヒエラルキーが全く生じてないところ. 通常ならエントランスにセキュリティゲートやチ…

407 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(2)

丘に点在する半透明のボリューム. 頂上の一番大きなボリュームが, いわゆるエントランスビルディング. 新古典主義の威厳ある旧館の正面性の強いファサードの横から, 不思議な形態がニュッと顔を出している. 形態の念入りに操作された量塊感. 旧館側面との間…

406 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(1)

ヨーロッパで田舎町といえば, のどかで平和, 時間の流れがゆっくりで昔ながらの生活が根付いている印象がある. 当然ながら都市部で起こるような犯罪とも無縁で, 夜一人歩きをしたところでまず被害にあうことはない. 多分コミュニティがまだしっかり根付いて…

405 レンゾ・ピアノの建築_Extension of Chicago Museum/Extension of Morgan Library

今回のアメリカでは, ・シカゴ美術館新館 ・キンベル美術館新館 ・ナッシャー彫刻センター ・モーガン図書館新館 ・ホイットニー美術館 と, 各都市で一つはレンゾ・ピアノの建築を訪れることができた. というよりどの街にも必ず一つはレンゾの作品があった. …

404 基壇と光の空間_IIT Crown Hall

イリノイ工科大学に着いた時は夕方で, クラウンホールの前にたどり着いた時にはもうすっかり暗くなっていた. 夕景がどんな感じかに興味があった. 一時期, 建築の夕景はまやかしだと思っていた時期があった. もちろん美しいけれど, 人に使われている建築の本…

217 ひらかれたものづくりの場(1)

2019年海の日,「長崎村の海開き」. 長崎といっても九州ではなく, 豊島区東長崎. 当然海などない. イベントの謳い文句が, 「地域にご縁のある音楽家と絵描きなどが集まって, 海がないのに海びらきします.」 もうこれだけでだいぶそそられる. 会場は, 絵具メー…

403 ミースの余白_Federal Center Chicago(2)

この広場にある独特の緊張感といやすさ. どこか, RCR作品の空間に感じるものと非常に似ている. おそらくこの緊張感を生み出していると思われるのが, 座標系とプロポーション. 広場を舗装する花崗岩板, 石のベンチ, 緑地帯, 建物の列柱, サッシ割, 徹底して同…

402 ミースの余白_Federal Center Chicago(1)

黒塗りの鉄骨フレームとマリオン, ガラス, トラバーチンの壁. シカゴのIBMビルやレイクショアドライブアパートメント、ニューヨークのシーグラムビルなど、多くのミース建築を今回滞在中に見た. デザインコードが共通のため, おそらく部分だけを見せられたら…

401 to 1960s TWA

近代という歴史をうまい具合に帯び, それを活用している. 帰国直後に立ち寄った旧TWA Terminal(現TWA Hotel)はまさにその好例. 喧騒のJFK Airport Terminal 5. 連絡エレベーターの文字盤には'1960s'と'Present Day(現在)'の2つのボタン. '1960s'に着くと, …

400 AMERICA_2019

2019年初夏, アメリカ. 高校の頃CA, AZに行って以来だが, 中部・東部は初上陸. ヨーロッパと並ぶ, 現代建築大国. Chicago→Kansas City→Dallas→Fortworth→Pittsburgh→New York と巡った. ヨーロッパと比べて, 街並に魅力のない国(=歴史的な街並がないから) …

216 Fer-ho nomes es

Fer-ho nomes es un gran chance i tambe un gran risc. Una comunicacio amb bones persones, em dona un estimul bo. Pero una comunicacio amb no tan bones persones teu perdes no solament el teu temps sino perdes el teu estimul tambe. Es una per…

215 ローカルビジネスと建築(番外1)

JR中央ラインモール開業は2014年末頃のことのようだ. 当時の自分の中では, 公共建築(≒地域拠点の施設)の対極にあるのが商業建築であり, ここは商業建築として認識されていた. そもそも当時, 地域拠点施設という概念自体あまり無かったように記憶している. JR…

214 大分芸文短大キャンパス整備_Oita PJC Project

大分県立芸術文化短期大学キャンパス整備(2019) 音楽ホール棟+図書館+芸術デザイン棟+シンボルロード デネフェス・オンデザイン設計JVで2015年末から設計監理を行ってきた大分芸文短大キャンパス整備第一期が, 3月の音楽ホール棟・シンボルロード整備の完成…

213 Vylder Vinck Taillieu @YGSA

Architecten de Vylder Vinck Taillieu @Y-GSA 2019/04/20 a+u 561で特集されたベルギーの建築家ユニット. それまで全く知らなかったのだが, そのドローイングに衝撃を受け, その年のa+uでもっとも印象に残った号だった. その彼らのレクチャーが母校YGSAで開…

212 ローカルビジネスと建築(3)

<おとなり otonari stand & works> NishiikeMartで開かれた「としま会議」に参加した後、板橋区にも同じようなローカル会議があるということを知った。 この仕掛人は板橋宿商店街で料理人をしている永瀬賢三氏。「いたばし会議」だけでなく「いたばし空想地…

211 ローカルビジネスと建築(2)

自分の生活拠点がある池袋三丁目近辺。ちょうど豊島区と板橋区の区境にあたり、周りには古くからの町工場と商店街が残る。いずれもが高齢化と後継者不在の問題を抱えており、廃業し、土地売却し、マンション化される場所も少なくない。近くの休業していた銭…

210 ローカルビジネスと建築(1)

Facebook上に「ローカルビジネス」が増えているように感じる。 「ローカルビジネス」、今のところの英語訳は「brick-and-mortar business」。 オンライン上の店舗に対して、レンガとモルタルで作られた、つまり実在店舗によるビジネスを意味するようだ。 You…

209 『現代の二都物語』 著:アナリー・サクセニアン

bookclub.kodansha.co.jp 副題は「なぜシリコンバレーは復活し、ボストン・ルート128は沈んだか」。 アメリカの二大ハイテク産業都市の1970年代〜90年代の対照的な発展/衰退の地域ネットワークの観点から分析である。 1970年代に軍需産業による発展、スタン…

324 Crematorio/空気感とランドスケープ(3)

葬祭場の内部へ. クレバス状の細長い回廊. 窓は無く, 淡黄色気味のコンクリート壁を, トップライトからの光が洗う. 矩形の礼拝堂. 無数に降り注ぐスリット状の光. 天空からの光が分厚い地を突き破ってそこに到達する様子はBell-llocの表現とも似ている. 方形…

323 Crematorio/空気感とランドスケープ(2)

水平性を強調する水盤, 無機質に建つ本体のコンクリートボックス. 回廊は, この湿地の風景をただ眺めるだけでなく, その空気感の中に身を浸し, 気を整えるための境界. <中間領域>と言ってしまえばそうなのだが, 何かそれだけではニュアンスが抜け落ちてしま…