416 実像と虚像のブルックリン_Brooklyn

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ブルックリン.

このエリアが注目を集めるようになったのは2017年頃のことだっただろうか.

アンティーク+シンプルモダン, そしてクラフト感.

家賃の安さに惹かれて移住してきたクリエイターたちによって, 寂れて治安の悪かった旧工業地域は, クリエイティブな街の代名詞になった.

興味深いストーリー.

だから2019年NYを訪れた際に, 必ず立ち寄りたいエリアの一つだった.

 

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ただ, 実際に訪れてみると, 期待に相反して物足りなさを感じた. 少なくとも自分は.

もしかしたら, ここに暮らす人々のみが知る隠れたコミュニティポイントがあるのかもしれない.

が, 実際に自分が強く感じたのは, この街を蝕みつつあるジェントリフィケーションの波である.

 

 

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Bedford St.周辺. ブルックリンといっても広いが, この辺りがいわゆる中心街らしい.

もちろん, いくつか目を引く良質な空間も存在する.

 

 

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昼間から軒下で飲めるバー・スタンド, 倉庫を改修した天高の高いアパレルショップ, ひっそりとある工房.

いわゆる, 日本でもコピーされてるところのブルックリン像.

けれど, こうした場所は数えるほどしかなかった.

 

 

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ともかく至るところが大規模工事中だった.

それも, あまりワクワクするものができるような工事ではなさそうだ.

 

 

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つい最近完成したであろう, 閑静な高級住宅街.

入居は満室のようだ.

 

 

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これもつい最近完成したであろう, 商業テナントビル.

ブルックリンらしさの象徴であるレンガを外壁に模しているが, どこか安っぽい.

日本の郊外に作られた, 小洒落たショッピングモールのようでもある.

 

 

クリエイティブ層が集まるボーリング場を改修したバーがあるということで検索して見たら, もう閉店していた.

倉庫の屋根裏を改修して作られたフュージョンレストランも, 調べたら閉店していた.

 

 

ジェントリフィケーション.

もともと打ち捨てられた家賃の安い地域にクリエイティブ層が移住, 彼らが工夫しながら生活することでそこが刺激的な地域として認知される.

するとエリアとしての魅力に惹かれ多くの人が入居し始め, エリアの不動産的価値が上昇していく.

結果, 家賃が上昇し, もともと住んでいたクリエイティブ層はここに住めなくなり, 土地資産の上昇に目をつけたディベロッパーや不動産業者, そして富裕層のみがここを占有していく.

 

2017年からまだ2年しか経っていないのに, もうこの状態が起こっている.

ジェントリフィケーションは本当に恐ろしいと思った.

街の価値を上げたのはクリエイターたちのライフスタイルだったはずなのに, いつのまにかそれがイメージと利便性と不動産的価値に置き換えられてしまうのである.

それは, 本当の良さがあっという間に消費されてしまったと言ってもよい.

 

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夜, マンハッタンを対岸に臨む公園では多くの人がくつろいだりスポーツしたりしていた.ここから見たマンハッタンは, 静かで, こじんまりしていて, 世界随一の大都会には似つかわしくない,不思議なのどかさを感じた.

 

眺望と利便性.

いかにも分かりやすい価値で, ディベロッパーが好みそうな価値だ.

 

けれど, この街には多分つい最近まで, もっと特異でここにしかない価値があったはずなのだ.

 

 

ジェントリフィケーションによる本当の価値の消費.

地域に取り組むにあたって, 避けて通れない課題である.