223 Structure-atmosphere-ecosystem(4)
7.残存するもの/関係性を変えるもの_Structure
自然の生態系を読むように社会のエコシステムを読み解き,
そのエコシステムに接ぎ木するように空気感と構造をつくること.
先に書いてしまうと, これが多分自分が目指している建築なのだと思う.
構造とは,まず第一に残存するものである.
時としてそれは, そこにあった過去の生態系の痕跡である.
また時として, 現代に合った生態系の営みを堅固に妨害するものにもなりうる.
新しい構造を導入することは, すなわち関係性を変えることである.
<生態系=エコシステム>が鍵となる時代の建築において, こうしたポジティブ/ネガティブの両極面を持つ構造との向き合い方, 「構造との対話」は主題だと言える.
どこを残して, どこを撤去するのか.
一見, 単なるリノベーション論にも見えるが, 建物単体だけの話ではないということを断っておきたい.
どこを残すか.
そもそもなぜ残すかというと, それも生態系の一部になっている可能性があるからだ.
特に, もともと強い生態系のある(or あった)地域においては, 「残す」ということは避けて通れない主題である.
どこを撤去するか.
撤去は慎重かつ大胆に.
撤去すること=新しい構造を導入すること. つまり新しい関係性をつくることである.
時代の生態系に合わず, 生態系を停滞させている構造の部分を見つけ, それを変える.
それには生態系と既存の構造をよく見て, 対話することが必要となる.
面白いもので, 構造さえ整えば, あとは細かなチューニングをすれば空気感は自ずと醸成されていくものだ.
良い空気感が醸成され, そこに良い生態系が形成されていくかは, 実は構造が大部分を決めてしまうと思っている.
8.パッケージ化された生活からの脱却_Structure-Atmosphere-Ecosystem
よくよく考えて思い返してみると, いかにこれまでの我々の生活が「パッケージ化」されたもので, それが今存続の分岐点に来ているということに気づかされる。
「パッケージ化」された生活というのは, 要は個人個人の所有(=パーソナライズド)を推し進め, 自己完結を目指す生活であった. (更に言うと, 個人所有を推奨することで特定のメーカーがお金を巻き上げる仕組みでもあった.)
ポストコロナにあって, 今二つの道が示されつつある.
一つは, よりこれまでのパーソナル化・パッケージ化を強化させる方向. (プライベートなテレワーク空間や空気清浄機能等を売りにした高級マンションなど.)
もう一つは, これを機に近接居住圏のエコシステムを見直して再編纂し, より良い近接居住圏を作っていこうという方向.
コロナ以前から, 時代は後者に動きつつあったが, その動きは加速しているように見える.
社会の「生態系」は一見複雑であるが, 既にうすうすそれに気づいている人は多い.
それが如何に, パッケージ化された生活よりはるかに自由度が高く, クリエイティブであり, 人間的か, ということに.
そして, 社会の「生態系」に接続するものとして建築を考えるなら, それは「パッケージ」から脱却して「構造」と「空気感」から成る建築を考えることに他ならない.
自由に「生態系」に接続できそして組換えもできる「構造」と「空気感」の建築を.
締めが難解な文章となったが, まずは自分自身の11-1 Studioでこれを実践してみたい.