060 『建築をめざして』を読んで①
言わずと知れた、ル・コルビュジェの著書である。
「建築は住むための機械」という、近代建築史上の名言はこの本にある。
あまりに有名すぎて、内容は要約されたものに触れてきたので、「近代建築の教科書的な位置づけ」と勝手に判断し、今まで見過ごしてきた。
今回実際に読んで印象的だったので、記録しておこうと思った。
内容については、当然のことながら要約の通りだった。
だが、実際読んで感じたのは、これは普遍的な「近代建築の教科書」などでは全くなく、ル・コルビュジェという一人の建築家の好みと個性によるマニフェストだということである。
実際この本を読んで感じることは、船舶・飛行機・自動車といった、当時の「新しい時代」を予感させたであろう「機械」についての図版の多さである。船舶・飛行機・自動車でそれぞれ1章ずつ費やしている。
しかも、それらの写真がとても恣意的なのである。
というのは、船のバルコニー、飛行機の三重になった主翼、自動車のコクピットなど、それぞれ「機械」の一部を写した写真なのだが、それがあたかも建築の一部のような構図なのだ。
こうした格好良い写真をこれでもかと見せ、「機械」における、ある役割のために特化し洗練された素晴らしさを語り、「今の時代」の建築もこうであるべきだという主張を熱っぽく伝えてくる。
つづく