075 Museum Kolumba 現象が沈殿する間

美術館の内部から続く扉を通ると、急に空気のひんやりとした間があった。
かつて破壊された礼拝堂の遺跡の中を、宙に浮いた紅い木製の重厚なバルコニーを伝って散策する。
いろいろなものが空間に漂い、浮遊し、沈殿している、そんな感じを覚えた。


  
新たな天蓋として架けられた、多孔質な組積造の壁の孔から差し込む光は星のようであり、天蓋から吊るされたZumtorのデザインによる円錐形の照明は宇宙に浮かぶ惑星群のようである。
繊細で周到なディテールが、空間全体としてのこの迫力を生んでいるようである。


さらに、そこにおかれたアート作品がまた、この空間によく合っている。
それは、訪問者が声を録音し、その録音された声の蓄積がランダムで再生される、そんな作品だった。



沈殿した古い遺跡の記憶、空気、宙に浮かぶ照明やバルコニー、壁の孔から差し込む光や外気、そこを行き交う人々とその声の記憶。
そんな様々な現象がミックスされ、漂い、沈殿していた。