302 黒と質感のコラボレーション Musee Soulage②

Rodezの中心街は小高い丘の上にあるようだった。
駅は丘の下に位置していた。
朝暮の中、かなり急勾配な坂を上らなければならなかった。


ようやく街の中心に着いた頃には太陽もだいぶ高度を上げていた。
荷物から自由になりたかったが、まだ早い時間なのか宿も空いていなかった。
やむを得ないので、荷物を持ったままMusee Soulageに行くことにした。


街の中心からはほどなくして美術館のシルエットが見えてきた。
美術館は街の端にある公園の、そのさらに端の斜面に建っていた。
公園に対して控えめなボリューム感だが、唯一エントランス部分のみ大スパンの庇が迫り出している。


10m以上は迫り出しているだろうか。それに比して高さは2~2.5mくらいだろうか、とても低い印象である。
庇は公園の遊歩道の全幅に渡って架けられていて、そこだけ異様な緊張感が醸し出されている。


庇の下に入ってみる。
木立の長い影は庇下のスチールの床にまで滑り込んできている。
太陽光は外部の薄い霧に拡散されたり、庇下の床に反射して、床と天井に表情を生んでいる。


とても低く暗いスペースなのだが、床に敷かれた黒い平鋼が光沢と艶感を持っており外光を反射させて輝き、
一方の天井のコールテン鋼がこの反射光を鈍く受けている。
周囲の公園の緑と相まって、単に暗く低いスペースというだけでない、くつろげる日陰スペースがつくり出されている。


この街に一泊したので、1日の中で様々な時間のこの場所を見ることができた。
軒下空間も刻一刻と表情を変え、ちょうど散歩や買物や通学のルートなのか、
美術館への来訪者以外にもたくさんの地元の人がここを通ったり休んだりしていった。


つづく