304 黒と質感のコラボレーション Musee Soulage④

10時になりようやく美術館の中に入ることができた。
もともとRCRの建築作品を見るというだけでなく、Soulageの作品を見ることもまた楽しみだった。
Soulageの作品をRCRの空間の中で鑑賞する、その贅沢さは期待を裏切らなかった。





     

「黒の画家」と呼ばれるSoulageの作品。
使われるのは黒のモノトーンと表面の質感である。
光沢のある黒、錆びた鉄のような鈍い黒、櫛引されたストライプ状の黒、
使用されるボキャブラリーは非常に静かでミニマルだが、一つ一つが強い存在感を放つ作品になっている。


われわれ日本人にとっては、それは黒の濃淡だけで表現する水墨画のようにも感じられるし、
櫛引で動きを表現する様は枯山水庭園を連想させ、鈍い光沢を持った黒い表面は長次郎の楽焼茶碗-俊寛を連想させる。
谷崎潤一郎の『陰影礼賛』にも通じるところがあるように感じる。





RCR自身も、強い影響を受けたものの一つにSoulageの作品を公然と挙げている。
その影響がいつからかは知らないが、RCRの作品はSoulageの黒の世界を建築に空間化したのではないかというくらい、
強い相関性が見受けられた。


つづく