317 ユトレヒト/グラフィック(3)

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鉄格子も鎧戸も無い, ユトレヒトの大きな窓.

 

ヨーロッパの多くの国々がカトリック-ラテン系であるのに対し, オランダは清教徒が多く, 疚しい生活をしていないことを表明するため, このような窓であるとのガイドブックの記載.

確かにどこの窓も, よく磨かれたガラスと整然とした室内が, 堂々と路地に面している.

窓のすぐ横に誰でも座れるベンチを設けている住居も多い.

これだけガラス面が大きいとプライバシーや防犯性や断熱性等, 多々気になるが, そこをも超越して彼らの生活を外へ表明しようとする住民たちの強い意志のようなものすら感じた.

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ふと, 東雲キャナルコート山本理顕棟のようだなと思った.

キャナルコートも共用廊下に面した住戸玄関側がガラス張りとなり, 住民たちが思い思いにディスプレーとして飾り付けをしているという.

理顕氏曰く, 人から見えることで住人はその場所をとてもきれいに使うことを意識し始める, そして住み方が変わる と.

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宗教上の理由かはさておき, 街を歩くだけでこの街の住人のこの街に対する誇りと愛着が感じられる.

ヨーロッパの多くの街では, 路地はところどころ舗装が壊れ, 工事中の仮囲いが長期間存置されたままになっていたり, ゴミが散乱しそれを毎朝清掃業者が掃除する風景をよく見かける.

それに比べると, この街は路地までもきれいに使われている.

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なんでもない街路の, 非常に繊細なレンガ舗装パターン.

手入れにも手間がかかるはずだ.

路地に対して非常にオープンな居間, 居間からよく見える路地.

その両者をつなぐ大きな窓が, そのような愛着に満ちた住み方を作り出しているのかもしれない.

 

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