405 レンゾ・ピアノの建築_Extension of Chicago Museum/Extension of Morgan Library

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今回のアメリカでは,
・シカゴ美術館新館
・ナッシャー彫刻センター
モーガン図書館新館
・ホイットニー美術館
と, 各都市で一つはレンゾ・ピアノの建築を訪れることができた.
というよりどの街にも必ず一つはレンゾの作品があった.
 
レンゾの建築は, おそらく玄人好み.
個人的には, なかなか空間自体から直接的に伝わってくるものが少ない建築だと思う.
破綻が無いし, 綺麗で寡黙.
プランも断面もほとんど奇抜なところは無い.
レンゾはルイス・カーンの弟子にあたる(厳密には協業).
上記の特徴は, 同じく今回訪れたカーンのキンベル美術館とそっくりだと個人的には感じた.
 
自分はあいにくレンゾの建築については詳しくなく, あまり予備知識なくこれらの建築を体験することになった. 予備知識なく体験して感じたままを書く.
 
シカゴ美術館新館

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2層吹き抜けの明るい回廊が出迎える.
シンプルだが細部を見ると統一された強いこだわりが感じられる.
 

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光を通すガラス屋根を支えるのは, 軽やかな細い線材のテンション材.
両側は壁式ラーメンだろうか. 大開口から, 2Fへ上り下りする人の動きが垣間見える.
大空間ながら構成要素の重さを感じない.
 

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そんな軽やかな空間にかかる階段や2F床はどうだろう.
いずれも, 先ほどのテンション材と同じく細い線材で, 3F床から吊り下げられている.
 

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3Fまでの動線で徹底される線材の美学, そして構造の軽やかさと浮遊感.
 

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そんな空間意図はドアにまで.
ドアは壁に固定されることも, 床からピボットヒンジで固定されることも嫌い, 軸から持ち出された機構で開閉される.
開閉が美しい.
 

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地上から組み上げていったというより, 天上からフワッと置かれたかのような大屋根.
尖頭型の柱脚が地表とピンポイントで接する.
細部まで軽やかさが徹底されている.
 

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CT鋼のマリオン材も材の構成が明快.
一見何の変哲も無いけれど, 細い断面形状.
 
 
モーガン図書館新館

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ほぼ博物館のような立派な旧図書館のエントランス部に増築されたガラスの箱.
 

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通りに対しては控えめのファサードが迎えるが, 内部は裏庭に面した高い開放感のアトリウム.
 
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ここのメイン構造フレームとサブフレームのシステムも徹底されている.

十字型の柱. 端部には通しでスリットが入っている.
 

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そのスリットがコンセントのように, スラブからの控えとなり, 階段の踊場受けになっている.
 
様々な建築家がいる.
最初に建築空間のイメージ(多くの場合骨格のイメージ)があり, それを微分して骨格や器官をデザインしていくスタイルの建築に対し, レンゾの建築は骨格と器官の緻密なデザインが積分されたものとしての建築空間という印象を強く持った.
いや, レンゾの場合はその「器官」ですら骨格に取り込まれた, 生物というよりはメカやロボットに近いような感じと言う方が正しいだろうか.
 
そもそも今回訪れた都市選定の際にはレンゾの建築が一番の目的ではなかったのだが, 
訪れた全ての都市で1度はレンゾの建築に触れそのディテールを観察したため,
なかなか強烈な印象として残った.