408 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(3)

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剥かれたリンゴの皮のように螺旋状に浮かぶスロープにより, 

柔らかい光の空間が全体に行き渡り, そこで行われる様々な活動を一様に包み込む.

 

ここの素晴らしさは, そこにヒエラルキーが全く生じてないところ.

通常ならエントランスにセキュリティゲートやチケットゲートがあり, 警備員が立ち,

ある種の物々しい雰囲気と, お金を支払った者・支払ってない者を隔てる境界があったりするのだが, ここには何のゲートもない.

入場は完全無料で, 館内マップを渡してくれるボランティアスタッフがいるだけ.

そしてもらったマップには、その日の館内で開かれるイベントの案内. 

 

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旧館と繋がっている地階には様々なワークショップコーナーと, スナックコーナー.

一角にはライブステージが組まれ, アンプなどが用意されていた.

非常に広いエントランス空間は, なかなか自由な使われ方をしている.

 

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旧館の方から聞こえる歌声に誘われて, そちらの方へ行ってみる.

荘厳なアトリウム空間で地元の学生によるゴスペルコンサートが開かれており, 

多くの人がその見物をしていた.

 

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地味に驚いたのが, 旧館のコレクション数とその充実ぶり.

私設で入場無料にも関わらず, 古代エジプトからギリシャ・ローマ, 中世ヨーロッパ, 近世西洋美術, 中国美術, 日本美術, その他アジア美術から現代アートまで, しかもかなり有名なものがたくさん.

繰り返しになるが, これで入場無料である.

 

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午後になりエントランス空間に戻ると, カンザスシティの名物でもあるジャズのライブが始まっており, こちらも多くの人が集まって盛り上がっていた.

偏見ではなしに, アメリカの美術館でこれほど多くの黒人系の客層を見かけるのも珍しくて印象的. (係員として従事しているパターンはよくあるが.)

それだけ地元の人々が日常の娯楽の一部として気軽に来ているということだろうか.

 

つづく