409 公共の空気が作り出すもの_Nelson Atkins Museum(4)

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スティーブン・ホール棟には現代アートのコレクションが収蔵.
エントランス空間から進み, 先に行くにしたがって下へ下へと降りていく.
斜面上の敷地に対して, 建物は丘にてっぺんの光のボックスだけが出るようになる.
外光をプロフィリットガラスで柔らかく拡散し, 逆T字の曲面天井が光を地下の展示室へと導く.
 

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展示室はしばらく地中を進み, 丘の麓あたりで外へ顔を出す.

純粋空間としてはこの辺りの全面プロフィリットの方が光が均質に入って美しい.
光量が曲面を伝って空間を満たしているのが感じられる.
 

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丘の中腹と麓にも出入口があり外と自由に行き来できる.
これも全館無料ならでは. アメリカでここまでオープンな公共空間は心配になるがここではさも当たり前のように成り立っている.
 

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外では丘に沿ってパターゴルフコースが設けられ, 多くの家族連れで賑わっていた.
コースは収蔵品を文字ったものになっており, 地元企業や大学がスポンサーとしてその制作費を出しているようだ.
 
展示されている豊富なコレクション; 旧館の歴史的な美術品, 新館の現代アートを鑑賞し, 疲れたら外の広大なランドスケープの中で一休みし, また屋内で食事や各所で始まるイベント(演奏や合唱)に耳を傾ける.
 
1日中居ても苦にならないどころか, 居たくなってしまう公共の空間.
そこにある, 言い表しづらい多幸感.
それを作り出しているものは何だったのかを考えてみる.
 
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まず, 様々な箇所で発生する人々の活動. そこへの関わりをいろいろと選択できるところに重要性がある. 予約して決められた時間に定員で集められて, ではなく傍観することもできるし通り過ぎることも, 逆にそこにのめり込むこともできる. その関わりを選択できるようなさまざまな場所がある.

 

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次に, 天気のように移ろう建築空間による現象・包容力のあるランドスケープがここにはある. プロフィリットガラスによる空間は内部においても外部においても光を拡散させ,時刻の経過とともにで様々な空気感を作り出す. 
空気感と人々の活動に直接の因果関係があるという根拠は無い.
強いていうなら, どちらもその空間に唯々とどまらせる理由を人々に与えているのではないかと思うのだ.