322 Crematorio/空気感とランドスケープ(1)

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ベルギーに戻り, Aarschotという駅からバスで15分ほど,

RCRのCrematorioを訪れた.

実はこの作品, 完成は訪問時のつい直前であったが, プロジェクト自体はかなり以前のもの. 2000年代前半のEl croquis には既にほぼ同じイメージでプロジェクトとして掲載されていた.

構想自体は, Casa HorizonteやBell-lloc, Espacio Barberiとほぼ同時期なのではと思う.

 

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元々が, アーキテクトでありランドスケープアーキテクトでもある, RCR Arquitectes.

建築とランドスケープの境界を行く微妙な立ち位置がスタート地点であり, それが結果的に彼らの独自性となっている.

このプロジェクトは構想がそのスタート地点に近く, 且つ一番最近に施工されたもの, ということになる.

 

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地元Olotでの土地にも建物にも火山岩が積み上がっているランドスケープ.

それに対し, ここではフランドル地方の平野と湿地がどこまでも広がるフラットさ, 土地の低さにフォーカスが当てられている.

 

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黄白色のコンクリートの園路, コールテン鋼の外構エレメント.

なだらかなアプローチ.

 

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園路は建物の端から, 建物外周の回廊へと誘導.

微妙に下がりながら.

建物の高さをあまり感じないのは, このことに起因していると思われる.

中央の門のような部分を作るのではなく, わざわざ端から入るように誘導させるアプローチ. 建物外周もあくまでも園路の一部として構成する意図が見える.

 

→(2)

 

 

 

 

 

 

207 大塚まちづくりシンポジウム

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大塚駅周辺まちづくりシンポジウム memo

2018.12.02 @南大塚ホール

 

基調講演1

高野氏(豊島区長)

(1)消滅可能性都市から持続発展都市へ

・H26.5.8日本創成会議「消滅可能性都市」に23区で唯一選定 →大きな危機感

・「住みたい街」「訪れたい街」として「選ばれる街」へ のビジョン

・国際アート・カルチャー都市構想

・大塚アフター・ザ・シアター

 

(2)東アジア文化都市

・2019年東アジア文化都市に豊島区、西安市、仁川市が選定

・少女キャラクターが「いけふくろう前」「トキワ荘」「都電」「鬼子母神」を巡るアニメ調のプロモーション動画

https://www.youtube.com/watch?v=HLcQV_bMfAg#action=share

 

(3)大塚のまちづくり

・H21 大塚駅南北通路開通

・H29 大塚駅南口広場「トランパル大塚」開通

・今後 大塚駅北口整備:樹木剪定や照明計画により明るい公共空間へ

 

基調講演2

菊池氏(大塚北口商店会)

・古くは大塚七曲商店街

・ガン研や白木屋デパート撤退により衰退 →Atreや星野リゾートOMOの進出

大塚駅の南北分断 →H21南北通路開通により改善

・2020年を北大塚元年として盛り上げを

 

基調講演3

城所氏(大塚駅周辺を考える会)

・南北通路開通前は南北分断、放置自転車の問題

・大塚の全町会・商店会で南北通路と南口広場を検討

・「人と環境に優しい21世紀型広場」として南口広場案を町会要望として区へ提案

・歩行者優先、縁を都電、その外を自動車

・「トランパル広場」T:Tram R:Rose A:Art M:Music P:Parc

・朝のラジオ体操+清掃会でゴミのない状態を維持

・都電沿線をバラの散歩道に→「第20回全国花のまちづくりコンクール」優秀賞

・今後整備の中心は南側から北側へ

 

基調講演4

磯川氏(星野リゾートOMO5)

・OMO→街全体をリゾートと見立てる<都市観光リゾート>

・GO-KINJO 「ご近所」と「Go! 近所」

・街の魅力スポットを案内するOMOレンジャー→大塚は「はしご酒」「昭和レトログルメ」など各分野のスペシャリスト

 

懇談会

上4氏+伊藤氏(アーティスト)

 

大塚駅は隣の駅にも関わらず, これまで行く機会がほとんど無く,

初めて降り立ったのがつい最近のこと.

特に南口広場は大きく開けた開放的な場所となっており, その広場の縁を何分か置きに都電が通って行く風景が, ヨーロッパの広場のような雰囲気があった.

JRか区の主導と思っていたので, 今回それが町会・商店会等の住民主導だったと知って驚いた.

 

大規模開発にはない, こうした小さくても個性のある公共空間や街を多く作っていくことが今後豊島区のスタンダートになっていけば, それはかなり希望のあるまちづくり方針になりうるだろう.

 

 

 

321 Educatorium/Material(3)

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美しい階段があった.

 

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プロフィリットガラスによる光の壁と, 亜鉛メッキグレーチングによる透けた壁.

いずれも工業製品だが, それらを上手く組み合わせて使い, 上質な空間に.

 

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断面も納まりも隠しようがないのでそのまま表しになっている.

先ほどの透けた壁にはグレーチングの開口を挟み込むように固定された手摺のガセット.

2層全高におよぶプロフィリットガラスは, 工業製品の特性上高さが一枚では取れない部分が生じている. がここでは途中まで中間に中桟を上階スラブからの控えと天井からの吊りで流し, 成り立たせている.

その補強材的要素ですら, この階段の美しさを成り立たせる一要素だ.

規格制約のある工業製品を使うことをポジティブにそして素直に解いたデザイン.

 

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少し脱線する.

日本でいくつかの事務所に勤務したが, 傾向として <新しい空間>としての<新しい構造躯体>を追求し, 公共建築が多い事務所で働いているほうがなんとなく水が合った.

なぜ公共を好むのか, 大規模だからなのか, それが長年の疑問であったが, 今の事務所に入ってから同僚と話していて一つなるほどと思ったことがあった.

個人(設計者・施主)の好みで材料選択の可能性が無限にある高級住宅や商業建築と違い, 公共建築は材料選択の自由があまり無い. 内装や外装の部分にこだわったとしても, 公共であればVEとして真っ先に削られるのがその部分になる.

他方, 構造は基本的に削られることがない. 構造を削ることはもはや建築が成り立たないことを意味する. だから削られない構造躯体の部分に力を注ぎ, 構造躯体により新しい空間を実現しようとするのだ, と.

 

320 Educatorium/Material(2)

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内部空間の率直な印象.

ダイナミックな外観とは裏腹に, 非常に素直で質実剛健な建築だと感じた.

細部に至るまで,  堅実で必然性のある材の構成.

シュレーダー邸を見た後だったから余計そう感じたのかもしれないが,

材の構成としてそのまま建築を見せるというあり方が, とても似ている.

 

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折り返しの部分.

隠蔽せずにそのまま表しで見せている曲面部/平面部の断面.

天井は曲面を構成する構造としての鉄骨組がそのまま仕上げとしてある.

 

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 2つの大ホールの間を登る階段.

片方はRC打放し面, もう片方は金属板が曲面を描く.

 

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曲面壁に取り付けられた, 照明器具.

余計なものを削ぎ落とし, 極力シンプルなライトバーとして見せている.

 

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仕上げとしてそのまま表しにされている構造躯体や設備配管.

随所に挿し色のようにポジティブに使用される廉価な素材.

廉価でありながら全く安っぽさがなく, むしろ格好良い.

 

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→(3)

 

319 Educatorium/Material(1)

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Educatorium / OMA

@University Utrecht

 

ユトレヒト大学新キャンパスへは駅前から出るバスで.

高速道路JCTを越え, 少し街からは離れる.

キャンパス内のバス停に着くと, 個性豊かな建物たちのお出迎え.

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Wiel Aretsによる新図書館は良かったが, いくつかは奇抜なだけとしか感じられない建物も...

 

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いずれにしても, ここを訪れた一番の目的はOMA設計のエデュカトリウム.

床スラブが折り返されてそのまま屋根スラブになるダイナミックな構成は外観からも一目瞭然だが, 果たしてその内部空間はどのような空間体験か.

 

→(2)

 

318 ユトレヒト/グラフィック(4)

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街をいろどる, 遊び心のあるグラフィック.

 

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ユトレヒト駅の中からそれは始まっていた.

再開発中で非常に雑然とした駅周辺. 初めてこの街に列車で降り立った時に感じたガッカリ感はその後の街歩きで解凍されていったが, 駅周辺だけはいただけない街並みだった.

そんな駅構内にあったグラフィック.

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1枚目はブックスポットと呼ばれるもの.

2枚目は中央美術館のディスプレイ.

 

その中央美術館.

駅からは運河沿いの道を楽しみながら, その末端にある.

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駅のディスプレイと同一の, 単純な幾何学によるグラフィック.

線種によるメリハリがポイントだろうか.

日本人来訪者も多いのか, さりげなく日本語も使われている.

 

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路地を挟んで向かいの同じような建物はミッフィー美術館.

シュレーダー邸の帰りで戻ってきた時, すでに両方とも閉館時間を過ぎていた.

しかし薄暮の路地に浮かぶ, 光る円形とウサギのシルエットが「おかえり」と出迎えてくれているような感じがした.

 

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街並み, 人々, そしてグラフィック.

ユトレヒトは不思議な親近感の湧く街だった.

317 ユトレヒト/グラフィック(3)

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鉄格子も鎧戸も無い, ユトレヒトの大きな窓.

 

ヨーロッパの多くの国々がカトリック-ラテン系であるのに対し, オランダは清教徒が多く, 疚しい生活をしていないことを表明するため, このような窓であるとのガイドブックの記載.

確かにどこの窓も, よく磨かれたガラスと整然とした室内が, 堂々と路地に面している.

窓のすぐ横に誰でも座れるベンチを設けている住居も多い.

これだけガラス面が大きいとプライバシーや防犯性や断熱性等, 多々気になるが, そこをも超越して彼らの生活を外へ表明しようとする住民たちの強い意志のようなものすら感じた.

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ふと, 東雲キャナルコート山本理顕棟のようだなと思った.

キャナルコートも共用廊下に面した住戸玄関側がガラス張りとなり, 住民たちが思い思いにディスプレーとして飾り付けをしているという.

理顕氏曰く, 人から見えることで住人はその場所をとてもきれいに使うことを意識し始める, そして住み方が変わる と.

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宗教上の理由かはさておき, 街を歩くだけでこの街の住人のこの街に対する誇りと愛着が感じられる.

ヨーロッパの多くの街では, 路地はところどころ舗装が壊れ, 工事中の仮囲いが長期間存置されたままになっていたり, ゴミが散乱しそれを毎朝清掃業者が掃除する風景をよく見かける.

それに比べると, この街は路地までもきれいに使われている.

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なんでもない街路の, 非常に繊細なレンガ舗装パターン.

手入れにも手間がかかるはずだ.

路地に対して非常にオープンな居間, 居間からよく見える路地.

その両者をつなぐ大きな窓が, そのような愛着に満ちた住み方を作り出しているのかもしれない.

 

→(4)