213 Vylder Vinck Taillieu @YGSA
Architecten de Vylder Vinck Taillieu
@Y-GSA 2019/04/20
a+u 561で特集されたベルギーの建築家ユニット.
それまで全く知らなかったのだが, そのドローイングに衝撃を受け,
その年のa+uでもっとも印象に残った号だった.
その彼らのレクチャーが母校YGSAで開かれるということで, 久しぶりに.
余談だがパワープラントスタジオの象徴だった煙突が撤去されていたのには驚いた.
彼らのドローイングは, 抽象度の高いアクソメトリック, 色付き手描きタッチの線画,
一見シュルレアリスム絵画のような色のある面のみで構成された立面パース,
いずれもミステリアスで想像力を掻き立てられる. (そして完全には理解ができない.)
冒頭にモデレーターを務めた妹島さんが, 「ドローイングに圧倒され, これはどこからどこまでが提案なのだろう」とコメントされていたが, まさにそれと同じ印象をa+uを見た時に受けた.
今回のレクチャーでは実作の写真が中心で, これらのドローイングはあまり登場しなかったが, 紹介されたプロジェクトは大半がリノベーションだった.
古い邸宅や宮殿や工場など.
印象に残ったプロジェクトを2つほど.
レクチャーは通訳無しの完全に英語だったため, 正確に理解できてない部分もあるかもしれない.
Rot-Ellen-Berg
古い邸宅, 内部が火災で焼失したようだ.
歴史を刻んだ外壁はそのまま残された.
彼らはここに, 新しい屋根と新しいフロアをインフィルした.
その新しいフロアは, 仮設材のようなむき出しのLGSと木組みで組まれ,
開閉可能なアルミサッシがはめ込まれている.
まるで廃墟となった遺跡を補修する仮設足場のように, それは古い壁面から意図的にオフセットさせて入れられている. 古い外皮と新しい構造の間の中間領域をデザインとして創り出すため.
手前には古い暖炉がそのまま残り, 新しい構造材に囲いとられ,
その外には対比的に歴史的な古い構造が見える.
繰り返すが, これは工事中の写真ではなく竣工写真である.
この空間を住人がどのように使っているか, そんなスライドもあった.
PC Caritas
古い宮殿か屋敷と思われる.
一帯が, 精神病院としてコンバージョンされた.
彼らはここでも, 古い外壁はそのまま残し, 鉄骨などで補強した新たなフロアを加えながら, 小さなガラスハウスを複数挿入している.
この新しいガラスハウスと, 古い外壁との間にある囲われた中間領域.
ドローイングでも写真でも, そこには木が生え, 街灯が置かれ, まるで屋外の公園のようだ. 実際にここには太陽光も差し込み, 雨も降り注ぐのだという.
完全な室内が必要な時にはガラスハウスを使えばよく, それ以外はこの公園のような空間がメインとなる. そしてその公園は, 古い外壁に囲われた廃墟により創り出されている.
彼らのプロジェクトには, 歴史として現前する古い構造(=外皮としての外壁であることが多い)とそこに新しく挿入する軽い構造があり, それらの間に敢えてズレを生じさせることで, 非常に対比的な中間領域を生み出している, それが共通して根底にある気がした.
手前味噌となるが, 自分の卒業設計の際にしたかったことと通じるものがあると感じた.
いずれにしても, より彼らの建築について強い関心を抱いた.
秋にギャラリー間で展覧会があるようなので, 是非またチェックしたい.